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上肢(肩、肘、手首、手指)の障害

 欠損障害

等 級

障害の程度

1級3号 

両上肢をひじ関節以上で失ったもの

2級3号 

両上肢を手関節以上で失ったもの

4級4号

1上肢をひじ関節以上で失ったもの
①肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
②肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
③ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

5級4号

1上肢を手関節以上で失ったもの
①ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
②手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

 

 機能障害

機能障害とは、3大関節の動きの障害であり、その可動域の制限の程度により等級が認定されます。
したがいまして、機能障害においては、適切な時期に正確な可動域の測定を受けることが重要です。
 
関節可動域の測定には、①被害者が自発的に曲げる自動運動を測定するものと、②医師が手を添えて曲げる他動運動を測定するものがありますが、後遺障害の認定には、原則として他動運動を測定したものが採用されます。
ただし、神経の麻痺を原因とした機能障害の場合、そもそも自発的に曲げる自動運動が不能であるにも関わらず、他動運動の測定では正常な可動域となってしまいます。したがいまして、後遺障害診断書に「麻痺を原因とするため自動運動が不能である」旨の記載をしてもらう必要があります。
 
また、機能障害は受傷していない側の下肢との比較で、後遺障害を認定するのですが、受傷していない側の下肢がそもそも事故前から機能障害を負っている場合があります。この場合には、比較しても意味がありませんので、後遺障害診断書に「健側の関節に、事故前からの可動域制限が存在するため、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会の定める参考可動域角度との比較をする必要がある」旨の記載をしてもらう必要があります。
 
測定は医師が行うのですが、必ずしも可動域の測定に精通していない医師も少なくなく、被害者の疼痛を全く無視して無理やり押し曲げて他動運動を測定する医師もいらっしゃるようです。機能障害は、障害が残ってしまった関節の可動域が、健康な側の可動域の2分の1ないし4分の1に該当するか否かで、機械的に判定が下されますので、わずか5度の測定の違いで、数百万円以上賠償金が異なることも少なくありません。
正確な測定を受ける必要性が高いことに注意が必要です。
 
また、被害者の方は、総じて、治療をできるだけ長く受けることを希望されることが多いのですが、後遺障害認定との関係では必ずしも、長く治療を受ければプラスに働くとは言い切れません。適切な時期に症状固定の診断を受けることが必要になる場合もあります。骨折等における症状固定(治療を受けてもこれ以上症状の改善が望めない状態)の時期については、注意が必要です。
 

等 級

障害の程度

1級4号 

両上肢の用を全廃したもの

5級6号 

1上肢の用を全廃したもの
「上肢の用を廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいう。

6級6号

1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの

8級6号

1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
「関節の用を廃したもの」とは、関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺、自動運動での関節の可動域が健側の10%程度以下になったもの、のいずれかをいいます。

8級相当 

1上肢の3大関節の全ての関節の機能に著しい障害を残すもの

10級10号 

1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
「関節に著しい障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの

10級相当 

1上肢の3大関節の全ての関節の機能に障害を残すもの

10級相当 

前腕の回内・回外について、その可動域が健側の4分の1以下に制限されているもの

12級6号 

1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
「関節に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の4分の3以下に制限されているもの

12級相当 

前腕の回内・回外について、その可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの

 

 人工関節・人工骨頭

等 級

障害の程度

10級10号 

人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの

12級6号 

人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節

 

 動揺関節

動揺関節とは、靭帯損傷等により関節の安定性が損なわれてしまい、関節が正常より大きく可動するようになった場合や異常な方向に動くようになった場合をいいます。
動揺の程度について、ストレスXP撮影を行うことが必須です。ストレスXP撮影の結果を添付しなければ、後遺障害診断書に靭帯損傷の記載があったとしても認定されません。注意が必要です。

等 級

障害の程度

10級相当

常に硬性補装具を必要とするもの

12級相当 

時々硬性補装具を必要とするもの

 

 習慣性脱臼

等 級

障害の程度

12級相当

習慣性脱臼

 

 変形障害

変形障害は、通常レントゲン等により明確になるため、後遺障害認定において問題になることは少ないと考えられます。
しかしながら、医師によっては、いわゆる偽関節(骨折部の骨癒合が止まってしまい、異常な可動を示す状態)等について、治療の限界を認めることになるためか、後遺障害診断書に明確に記載しないことがあります。そのような場合は、事故による不可避的なものであることを医師と十分に話し合って、後遺障害診断書に明確に記載してもらうことが重要です。

 手指の障害

欠損障害

等 級

障害の程度

3級5号 

両手の手指の全部を失ったもの

6級8号 

1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの

7級6号

1手のおや指を含み3の手指を失ったもの
1手のおや指以外の4の手指を失ったもの

8級3号

1手のおや指を含み2の手指を失ったもの
1手のおや指以外の3の手指を失ったもの

9級12号 

1手のおや指を失ったもの
1手のおや指以外の2の手指を失ったもの

11級8号 

1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの

12級9号 

1手のこ指を失ったもの

13級7号 

1手のおや指の指骨の一部を失ったもの

14級6号 

1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

 

機能障害

「手指の用を廃したもの」とは、以下のいずれかの場合が該当します。
「用廃」とはいいますが、その語感とは異なり、実際には、骨の一部を失った場合や、感覚の脱失も該当することに注意が必要です。
・手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
・中手指節関節又は近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)の可動域が健側の2分の1以下に制限されるもの
・おや指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されるもの
・手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの
 

等 級

障害の程度

4級6号 

両手の手指の全部の用を廃したもの

7級7号 

1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの

8級4号

1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの
1手のおや指以外の4の手指の用を廃したもの

9級13号

1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの
1手のおや指以外の3の手指の用を廃したもの

10級7号 

1手のおや指の用を廃したもの
1手のおや指以外の2の手指の用を廃したもの

12級10号 

1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの

13級6号 

1手のこ指の用を廃したもの

14級7号 

1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの