交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

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近時の自賠責保険の軽微事故への対応の変化(改悪)について

2020/10/09

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ここ数年、軽微事故に対する自賠責保険の対応に変化が見られるように感じています。
全国の交通事故事案を数多く取り扱っている弁護士と話をすると、ほぼ必ず話題に上がってきます。
札幌だけではなく全国的な傾向のように思われます。
 
恐らくは、自賠責保険の損害調査を一元的に取り扱っている損害保険料率算出機構の方針が変化したのではないかと推測されます。
 
具体的には、軽微事故の治療費が最初から拒絶(否認)されるケースというのが、以前よりも散見されるようになってきています。
つまり、事故に遭って通院しても、一切、自賠責保険金が支払われないというケースです。
(あるいは、非常に短期間、病院の治療費だけ支払われて、整骨院の施術費は否認されるというケースも散見されるようになってきています。)
 
以前は、軽微事故に関して、加害者の任意保険会社が支払を拒絶した後であっても、自賠責保険会社に請求を切り替えれば応じてくれることが多かったです。
被害者の救済という意味で、自賠責保険は有効に機能していました。
 
しかし、近時は、加害者の任意保険会社が最初の1ヶ月しか治療費の支払いには対応しないと、明言するようなケースでは、2ヶ月目以降の治療費を自賠責保険会社に請求しても支払を認めないケースが散見されるようになってきています。
自賠責保険の被害者救済という機能が弱まってきており、大変残念なことと感じています。
 
類型としては、以下の1~3のような場合が支払拒絶されるリスクがあるように思料しております。
 
1 軽微に見える事故類型
①ミラー事故(被害車両と加害車両のミラー同士が衝突)
②クリープ走行(加害車両がクリープ走行で衝突)
③駐車場内での加害車両のバックによる衝突事故
 
2 修理費が10万円以下
 
3 事故態様に被害者と加害者との間で争いあり
 
1~3のうち、2つに該当するようなケースは、最近の自賠責保険の傾向からして、支払が受けられるか否か、かなり危ういように思われます。
 
自賠責保険から支払拒絶されてしまうと、加害者の任意保険会社は、それ以後、賠償金を1円も支払おうとしなくなります。
場合によっては、既に支払った治療費の返還を求めてくることもあります。
 
裁判所に持ち込んだ場合も、自賠責保険が否認したケースでは、かなり苦しい戦いになります。
裁判所は、一般に自賠責保険より柔軟性があるといえますが、裁判官による当たり外れも大きく、見通しが立てにくい側面があります。
 
そのため、上記の1~3のうち、2つに該当するような場合で、任意保険会社から治療費の支払いについて、短期間で打ち切りを通告されたような場合は、慎重に対処する必要があります。
 
一見軽微に見えてしまう事故で、短期間で治療費の支払いの打ち切りを通告されたような場合は、対処が難しいケースが多いですが、過去の事例と比較するなどして、事案に応じた助言ができるかと存じます。お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬
 

リハビリについての150日ルールについて

2017/12/18

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交通事故の被害者の方で、医師から、「事故から150日間しかリハビリを実施することができない」と説明されたと仰って相談にいらっしゃる方が時々いらっしゃいます。
 
リハビリについての150日ルールとは、健康保険を使用してリハビリを受ける場合の診療報酬を算定する際のルールです。
 
リハビリの対象となる部位に応じて、所定の点数が算定できる日数の上限が定められています。
交通事故で実施されることの多い運動器のリハビリの場合、発症から150日が一応の上限として定められています。
 
このルールに基づいて、「事故から150日しかリハビリはできませんよ。」と初診時から説明される医師もいらっしゃるようです。
 
交通事故の被害者の方にも一定の過失が認められる場合には、自己負担額を下げるべく、単価の低い健康保険を使用されているケースが少なくありません。
そのような場合は、このルールに抵触する恐れが出てきます。
 
もっとも、この150日のルールについても、例外が認められています。
「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」等には、150日を越えても、一定の限度でリハビリを継続することが認められています。
 
ただし、例外的にリハビリの継続が認められるケースでも、診療報酬算定にあたり所定の点数が算定されるのは、1ヶ月13単位(1単位20分)に限定されています。症状が重篤な場合、極めて不十分といわざるを得ません。
 
また、所定の点数についても、150日以前より低く設定されています。
そのため、医師というよりは病院単位で、経営の観点から、150日を越えてのリハビリには積極的でないように感じられることがあります。
 
したがいまして、健康保険を使用している場合には、151日目以降のリハビリをどうすべきか、一定の考慮が必要となります。
 
医師において、150日を越えてもリハビリを継続できる例外に該当すると診断してくれれば、1ヶ月13単位(1単位20分)と少ないですが、リハビリを継続することができます。
しかし、ほぼ治癒に至っているという場合以外、1ヶ月13単位(1単位20分)では不十分な場合が多いと思料されます。
 
また、前述のとおり、150日を越えると、診療報酬算定の基礎となる所定の点数が低く設定されているため、医師において、例外を認めることに積極的になりにくいということもあります。
 
それでは、医師が例外として認めてくれそうにない場合、あるいは、例外として認めてくれたものの1ヶ月13単位では不十分な場合、どのように対処すれば良いでしょうか。
 
(医師が例外として認めてくれそうにない場合とは、本来的にはリハビリの継続が必要であるものの、健康保険のルール上、診療報酬が下がってしまうことから、例外として認めてくれそうにない場合です。
医学的に純粋にリハビリの必要性がないという場合は、やむを得ないといえます。その場合は、症状が残存しているのであれば、症状固定として、リハビリを終了するほかないといえます。)
 
そのような場合、加害者の任意保険会社が一括対応を継続して治療費を支払ってくれている状況であれば、151日目以降、健康保険の使用を取り止めて、自由診療に切り替えて、リハビリを継続することが考えられます。
 
しかしながら、150日を越えてから自由診療に切り替えることに、任意保険会社が了解しないことも十分に考えられます。
 
自賠責保険の傷害分の120万円の枠が残っているケースでは、任意保険会社が認めないということであれば、一旦治療費を立て替えて、自賠責保険会社に被害者請求するということが理論的には考えられます(ただし、自由診療で毎回立て替えていくことは、金額が多額に及ぶことから、現実的には容易ではないです。)。
 
自賠責保険の枠が既にない場合は、一旦、自由診療で治療費を立て替えておいて、その領収書を保管しておき、最終的に、加害者の任意保険会社に請求していくということも考えられます(この場合、支払を受けられないリスクが残ってしまうことにはなります。)。
 
いずれにしても、難しい状況にあることは確かです。
 
また、上記のようなケースとは異なり、健康保険を使用していないにもかかわらず、医師において、150日ルールの説明をしてくることもあるように見受けられます。
 
このような場合、医師において、150日ルールが、健康保険を使用する際のルールであることを十分に理解されていないように感じられることが少なくありません。
その場合、150日ルールは、あくまで健康保険を使用するに際してのルールであり、自由診療を前提とした交通事故の治療には適用がないことを、丁寧に説明して理解して頂く必要があります。
 
ただ、病院として、一律、健康保険のルールにリハビリの上限を合わせてしまっている場合もあり得ます(確かに、自由診療を前提とした交通事故治療であろうが、健康保険を使用した治療であろうが、医学的なリハビリの必要性は変わらないはずともいえますので、全く不合理とはいえません。)。
病院のルールといわれてしまうと、苦しいところです。
 
そのような場合は、治療の途中で他の病院に転院することを考えるほかありません。
交通事故の治療において、途中で転院すると、症状が残存してしまった場合でも、「途中の経過が分からないので、後遺障害診断書は書けない」といわれてしまうことがあります。
 
また、後遺障害診断書を書いてくれる場合でも、最初の病院の医療記録の記載との不整合が生じることがあるなど、不利益が生じることが少なくないです。
そのため、治療途中での転院は、あまりお勧めはできないのですが、リハビリを機械的に150日で終了させられてしまうことによる不利益と比較考量して、方向性を定めるほかありません。
 
以上のように、リハビリの150日ルールを持ち出されると一筋縄ではいかないことが多いです。
150日ルールでお困りの際は、専門家にご相談されることをお勧め致します。
 
弁護士 丹羽 錬

重度後遺障害に伴う将来の治療費等について

2015/05/09

通常、交通事故に遭われた被害者が治療を受け、傷害が治癒した場合には治癒日までの治療費が損害として認められ、治癒せず後遺障害が残存した場合には症状固定日(治療を続けてもこれ以上の改善が望めない状態に至った日)までの治療費が損害として認められます。
 
しかし、高次脳機能障害等の重度後遺障害が残存してしまった被害者の場合、症状固定日後も治療を続けなければならないことがしばしばあり、そのような場合には、症状固定後の治療費も損害として認められます。
症状固定後の治療費として、治療を続けなければ症状が悪化するという場合の保存的治療に要する費用は、ほぼ認められています。

例えば、頭部外傷後の抗てんかん剤や抗けいれん剤の投与、身体硬化防止のための電気治療、尿導バルーンの交換洗浄といった治療を継続しなければ症状が悪化するという場合には、それらの治療のための費用は、交通事故による損害として認められています。これに対して、将来のリハビリ費用については、被害者の後遺障害の程度やリハビリ治療の内容及び効果、主治医の意見、症状固定時の治療内容等により、判断が分かれています。
 
症状固定後の治療費に関連して、治療のための通院交通費の問題もあります。将来治療費が損害として認められることが当然の前提になりますが、この前提が満たされたとしても、交通費の内訳(経路)、単価等に関する具体的な主張・立証がなされなければ、症状固定後の通院交通費は認められないため注意が必要です。
 
重度後遺障害が残存してしまった被害者の場合には特に、将来治療費及び通院費が極めて重要な意味を持ちますので、専門家にお早目にご相談されることをお勧めいたします。


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