軽度外傷性脳損傷(MTBI)について
2015/04/10
東京女子医科大学脳神経外科の教授である川俣貴一医師が、軽度外傷性脳損傷(MTBI)について、以下のとおり、重要なことを述べられています。
・日本はCTやMRIの導入率が人口比で世界一であり、画像偏重になっている。
・受傷時に意識レベルがすごく悪いわけではなく、イメージで言うと軽い脳震盪。軽く意識消失をしたとか、ちょっとボーッとしたような状態が続くという受傷時の状態。実際には神経繊維などが損傷を受けている。
・むち打ち、外傷性頚部症候群、頚椎捻挫の中に軽度外傷性脳損傷が含まれている。
・「軽度」という名前が付いているが、これは受傷時の意識状態を言っているだけであり、症状が軽度とは限らない。非常に重篤な症状で社会復帰できない場合もある。
・画像について、CTでは中々分からない。
・MRIでも中々分からないことがある。
以上のことは、平成24年版赤本の下巻「外傷による脳損傷の基礎知識」に記載されています。
交通事故の損害賠償実務に大きな影響を与える赤本において、『CTでもMRIでも分からないことがある』と明記されていることは、非常に意味が大きいといえます。
自賠責保険においては、未だ、高次脳機能障害の認定において、CT、MRIの画像が偏重されている状況が続いていますが、こういった臨床にも精通した医師の発言の積み重ねなどにより、徐々に実務の常識を動かしていくほかないのが現状です。
しかし、赤本については、多くの裁判官が目を通されていると思われますので、高次脳機能障害において、CTやMRIでは分からないことがあるということは、裁判実務においても常識となりつつあるといえるのではないでしょうか。
ただ、CT、MRIでは分からない場合に、他のどの検査で、裁判官を説得するかについては、未だ課題が多いところです。
CT、MRIで所見が認められないにも関わらず、高次脳機能障害を認定した裁判例を分析すると、裁判官を説得するには、以下の2つの方法が考えられることが分かってきます。
①PET、SPECT、DTI(拡散テンソル)、MRS等の未だ評価が定まっていないとされる検査を複数の種類、実施して、複数の種類の検査で所見が認められること
②時を変えて、複数回の脳血流SPECT検査(PET等でも同様と考えられる。)を実施して、ほぼ同一箇所に所見が存在すること
ただ、現時点ではハードルは低くないといえます。
高次脳機能障害についての詳細はこちらをご確認下さい。
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