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後縦靭帯の骨化を理由に素因減額を認めた裁判例-大阪地判平成12年6月28日-

2015/05/04

本件は、事故以前から存在した骨棘形成、後縦靭帯の骨化を理由として、20%の素因減額が認められた事案です。
 

事故の衝撃

事故態様は、停止していた被害車両に後方から加害車両が衝突して、被害車両がバンパーやテールランプに擦過様の損傷を受けたというものです。
修理代は、休車補償を含めて、約14万円ということであり、それほど大きな衝撃ではなかったと評価できます。
 

後遺障害の程度

脊柱の変形 11級7号
左下肢等の頑固な神経症状 12級12号
併合10級
 
27%の労働能力喪失率とされる後遺障害等級10級が認定されており、軽いとはいえませんが、非常に重い後遺障害ともいえません。
 

事故前の後縦靱帯骨化症の症状の発症の有無

被害者は、本件事故の約6年半前にも交通事故に遭っており、その際、「頸椎症と後縦靭帯骨化症の所見があるが軽度」との診断を受けていました。
ただし、本件事故前のかなりの間、痛みや痺れなどの症状はなかったと認定されています。
つまり、後縦靱帯の骨化は存在したけれども、症状は発症していなかったということになります。
 

事故時の脊柱管狭窄率

具体的な脊柱管の狭窄率は認定されていませんが、骨棘形成と後縦靱帯骨化が認められ、C5/C6の椎間孔が著しく狭小化していると認定されています。
 

素因減額の理由

裁判所は、以下のような理由を挙げて、20%の素因減額を認めました。
①本件事故の態様によれば頸椎に受けた衝撃は必ずしも大きなものではない
②本件事故だけで手術をしても改善されない重い後遺障害が残ったとは考えがたい
③後縦靱帯骨化等による椎間孔の狭小化などの素因が影響を与えている
 

コメント

本件は、事故後、頸椎の前方除圧固定術を行っているにもかかわらず、神経症状が後遺障害として残存しています。
この点が素因減額の判断に大きな影響を与えたように考えられます。
 
事故態様自体はそれほど大きくないのですが、後遺障害自体もそれだけを見ると10級と決して軽くはないですが、非常に重篤な後遺障害とはいえません。
事故態様と後遺障害の釣り合いが取れていないともいえないため、素因減額は認められなくともおかしくないように考えられます。
 
しかし、頸椎の前方除圧固定術を行っても、なお、12級として認定されるような神経症状が残存したということから、裁判官は、事故態様からして、通常生じうる後遺障害以上の後遺障害が残存したものと考えたようです。
 
ただし、素因としては、後縦靱帯骨化症の症状は事故以前には存在せず、椎間孔の狭小化が認められたという程度のため、20%という比較的、低い割合の素因減額という判断になったようです。


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