後縦靭帯骨化症を理由に素因減額を認めた裁判例-大阪地判平成16年8月16日-
2015/05/14
本件は、事故以前から存在した後縦靭帯骨化症を理由として、50%の素因減額が認められた事案です。
事故の衝撃
事故態様は、信号の設置されていない交差点を徐行して進行していた被害車両の前輪付近に、加害車両の前部が衝突して、被害車両が転倒させられたというものです。
被害者は、事故時に第三肋骨骨折の傷害を負っており、事故の衝撃は相当なものであったと認められます。
後遺障害の程度
四肢のしびれ、上肢巧緻運動障害、歩行障害、頸椎の可動域制限、排尿困難、勃起障害等の後遺障害 併合8級(9級10号、11級7号)
労働能力喪失率45%とされている後遺障害8級が認定されていますので、後遺障害の程度は重いと評価できます。
事故前の後縦靱帯骨化症の症状の発症の有無
裁判所から「頸椎後縦靱帯骨化症と変形性頸椎症の既往症があったが、原告は、本件事故前には自覚症状がなく、その旨の診断を受けたこともなかった」と認定されています。
記載の仕方が微妙ですが、後縦靱帯の骨化の状態にあったが、症状は発症していなかったという認定と読み取れます。
したがいまして、明確な症状は発症していなかったといえます。
事故時の脊柱管狭窄率
脊柱管の狭窄度合いは、認定されていません。
素因減額の理由
裁判所は、以下のような理由を挙げて、50%の素因減額を認めました。
①事故前には自覚症状がなかった
②事故により相当な衝撃を受けている
③手足の痺れ等の脊髄症状の発現が事故から約2週間後であることからすると、本件事故が神経症状の発現に主として寄与しているとみることは困難
コメント
本件は、事故態様と後遺障害の程度は、それほどアンバランスになっているとは考えにくい事案です。
事故の衝撃と後遺障害の程度だけをみると、素因減額がなされなくとも不思議はないように思えます。
しかしながら、50%もの高い割合の素因減額が認められた原因は、四肢の痺れ等の脊髄症状の発現が事故から約2週間後だったことにあると思われます。
ただ、数ヶ月後であれば、まだしも、2週間後であれば、未だ事故の影響が大きいようにも考えられます。
そういう観点からすると、少し素因減額の割合が大きすぎるようにも考えられる裁判例です。
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