現在、事務所内の勉強会で、自転車同士の事故の過失割合について、文献を読み込んでいます。
交通事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38の基準をベースに実務は動いています。
しかし、別冊判例タイムズ38には、自転車対歩行者、自転車対自動車の過失割合は載っているのですが、自転車対自転車の過失割合は載っていません。
そこで、現在、検討が進められています。
自転車を運転する際、注意すべき点は、無灯火、傘を差しながらの片手運転、イヤホン・ヘッドホンを付けながらの運転など、街中で実際に見かけることの少なくない運転態様が、事故が発生した場合には、著しい過失として取り扱われることです。
自転車による事故ですが、昨今、マスメディアでも盛んに報道されているような印象を持っています。
当事務所にも、マスコミから取材の問合せが来ることもあります。
では、実際には、自転車による事故は増えているのでしょうか。
自転車対歩行者ないし自転車対自転車の事故の年間発生件数(全国)のデータです。
年 |
18年 |
19年 |
20年 |
21年 |
22年 |
23年 |
24年 |
25年 |
26年 |
自転車対歩行者 |
2783 |
2869 |
2959 |
2946 |
2770 |
2806 |
2625 |
2605 |
2551 |
自転車対自転車 |
4055 |
4184 |
4348 |
3919 |
3799 |
3616 |
3260 |
3037 |
2865 |
自転車対歩行者の事故は、10年くらいほぼ横ばいでやや減少しています。
自転車対自転車の事故は、減少傾向にあります。
では、札幌市における状況はどうでしょうか。
年 |
13年 |
14年 |
15年 |
16年 |
17年 |
18年 |
19年 |
20年 |
21年 |
自転車対歩行者 |
1 |
5 |
4 |
5 |
9 |
13 |
14 |
15 |
22 |
自転車対自転車 |
1 |
4 |
1 |
6 |
2 |
10 |
5 |
7 |
9 |
札幌では、冬場、自転車に乗る人は、極めて少なくなります。
その影響もあり、事故の数自体、非常に少ない状況です。
データとしては、少し古いですが、増加していることが見て分かります。
全国的な推移と大きく異なる理由について、その分析は難しいのですが、1つには自転車に乗る人が増えているということが上げられるのではないでしょうか。
以下のとおり、自転車が加害者になる事故においても、近時、高額の賠償責任が認められた事案が少なくありません。
東京地方裁判所平成15年9月30日判決 6779万円
東京地方裁判所平成19年4月11日判決 5438万円
東京地方裁判所平成20年6月 5日判決 9266万円
事故の数が少ないとはいえ、自衛のためには自転車保険に加入する必要があるといえます。
弁護士 丹羽 錬