交通事故に遭われた後、むち打ち症により、首・肩・背中・腰等の痛みや、手足の痺れ等の症状が発生することがあります。
しかし、痛みや痺れは外見からは分かり難く、周囲の人にも正確に理解してもらえないことが少なくないです。
交通事故後の後遺障害認定や、裁判等の場面でも、被害者の方が訴える痛みや痺れ等の症状を、被害者ご本人の証言以外の手段で、如何に証明するかが大きな問題となります。
(ご本人の証言だけでは、自賠責保険でも、裁判でも重要視されません。)
被害者の方が訴える症状については、以下のとおり、他の客観的な事実と整合していることを明らかにすることで証明することとなります。
①自覚症状
被害者の方の訴える痛みや痺れ等の症状、すなわち自覚症状がどのようなものかということです。
まずは、被害者ご本人の証言が症状立証のスタート地点となります。
この自覚症状が、以下説明する客観的な所見等と整合しているか否かが大きなポイントとなります。
②画像所見
レントゲンの画像やMRIの画像に、事故により発生し①の自覚症状を裏付ける所見(椎間板ヘルニア等)が認められるか、すなわち自覚症状を裏付ける画像所見が存在するか否かが大きなポイントとなります。
後遺障害認定等の場面では、MRI画像上の所見が重視される傾向にあります。
また、MRI画像上の所見が交通事故によって発生したものであるか(外傷性のものであるか)を示す所見(画像上の信号など)は、事故後、短い期間で消失してしまうことが多いです。
したがって、事故から一定期間内(2ヶ月程度以内)にMRIを撮影しておくことが重要となります。
③神経学的所見
①の自覚症状を裏付ける神経学的所見が認められるかも大きなポイントとなります。
神経学的所見とは、医師によりなされる検査(部位によりさまざまな検査があります。)の陽性所見です。
したがって、症状が強く、なかなか軽快しない場合には、医師に神経学的検査をしてもらうことも重要になります。
④事故態様
事故態様も非常に重要です。
事故態様、車両の損傷状況(修理費)から、大きな事故であること、事故により被害者の方が大きな衝撃を受けたことを説明します。
そして、そのような衝撃であれば②の画像所見が生じたり、被害者の方に①の自覚症状が生じても不思議ではないということになります。
⑤通院状況、治療内容等
事故後の通院状況や治療内容もポイントです。
症状が強く辛い場合には、治療に行く期間や回数が多いはずであり、治療期間や通院回数が多いのは、①の自覚症状があるからだということに繋がりやすいです。
また、治療の内容も自覚症状を裏付ける重要な事実となります。
例えば、ブロック注射を定期的に受けていたということになれば、痛みがそれだけ強かったということの証明になります。
ただ、症状が強くて辛いにも関わらず、仕事等の事情でなかなか治療に行けないという被害者の方が多いのも事実です。
しかし、後遺障害認定等の場面では、そのような事情をあまり考慮せず、機械的に治療期間や通院回数を見て判断しているのが実情です。今後改善されるべき点でもあります。
以上の要素を基に、被害者の方の痛みや痺れ等の症状を証明していきます。
これらにより、被害者の方の症状が医学的に説明できる場合には、14級9号(局部に神経症状を残すもの)が、後遺障害として認定されることになります。
被害者の方の症状が医学的に証明できる場合には、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が、認定されることになります。
「説明」と「証明」、似たような言葉ですが、後遺障害の認定の場面では、その意味が大きく異なっています。
繰り返しになりますが、痛みや痺れは、通常、目に見えません。
被害者の方の痛みや痺れ等の症状を証明するには、専門的知識を持った弁護士のノウハウを活用することが重要です。
ご心配がある方は、お気軽にご相談下さい。
弁護士 水梨雄太