民法711条は、「他人の生命を侵害したものは、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定しています。
この条文からすると、被害者が死亡した場合に慰謝料が請求できるものは、被害者の父母、配偶者、子に限られるとも考えられます。
この点に関して、昭和49年12月17日最判は、「被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうる」と判示しました。
この事案では、実際に、約20年に渡って、被害者と同居し、被害者の庇護のもとに生活を維持していた身体障害を有する被害者の夫の妹に慰謝料請求が認められました。
同最判によれば、以下の2要件を満たす場合には、父母、配偶者、子以外の者にも固有の慰謝料請求権が認められるということになります。
①民法711条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係があること
②甚大な精神的苦痛を受けたこと
内縁の配偶者においては、①②いずれも満たすと考えられますので、裁判例においても固有の慰謝料が認められています。
裁判例で内縁関係が認められるか否かは、概ね以下の要素で判断されています。
・同居していること及びその期間
・同一家計であること
・親族や勤務先等対外的社会的に夫婦として扱われていたか
内縁の配偶者と認められた場合の慰謝料の金額についてですが、一般的には、父母や子に認められる固有の慰謝料の金額より高額である場合がほとんどです。
理由としては、実質的には配偶者と同視できるものの、被害者本人の損害賠償請求権を相続により取得できないことから、特に保護する必要性が高いということにあります。
具体的には、以下のとおり、慰謝料総額に占める割合が3分の1から5分の1程度と認定されています。
裁判例によっては、2分の1を越える金額が認定されています。
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慰謝料額(括弧内は総額) |
大阪地判27.10.14 |
金600万円 (金2400万円) |
大阪地判27.4.10 |
金100万円 (金2800万円) |
岡山地判27.3.3 |
金300万円 (金2800万円) |
大阪地判21.12.11 |
金1300万円 (金2300万円) |
大阪地判21.9.30 |
金800万円 (金2400万円) |
東京地判12.9.13 |
金500万円 (金2400万円) |
大阪地判9.3.25 |
金1000万円 (金2500万円) |
内縁の配偶者の慰謝料については、赤本や青本に金額の目安が記載されているわけでもなく、慰謝料総額に占める割合が法定されているわけでもありません。
裁判官による判断のブレが大きいといえますので、主張、立証を的確に行う必要があるといえます。
裁判官によっては、1000万円を越える慰謝料を認定をしているケースもありますので、内縁配偶者の方は、諦めることなく専門家に相談すべきといえます。
弁護士 丹羽 錬