交通事故の
被害者側に特化した札幌の法律事務所
2017年9月
同一部位に関して、過去の交通事故の際、既に後遺障害の認定を受けている場合について
2017/09/24
交通事故により、通院を継続しても、最後に後遺症が残ってしまうことがあります。
最近、以下のようなご相談を受けました。
10年以上前の交通事故(1回目)によって後遺症が残存してしまい自賠責保険会社による後遺障害等級認定を受けていたところ、今回の交通事故(2回目)により同じ部位を痛めてしまい症状が根強く残存しているというご相談です。
このような場合、再度、同一部位に関して、自賠責保険における後遺障害としての認定を受けることができるのでしょうか。
この点、自賠法施行令によれば、同一部位に新たな障害が加わったとしても、その結果、既存の障害が該当する等級よりも現存する障害の該当する等級が重くならなければ、自賠責保険における後遺障害として評価することはできないとされています。
自賠責保険の後遺障害は永続性を前提としていますので、原則的には、このような考え方でやむを得ないところです。
ただし、1回目の交通事故による残存した症状の程度が比較的軽度であり、1回目の交通事故と2回目の交通事故との間の間隔がかなり空いているような場合には、注意が必要です。
例えば、「ある人が10年前の交通事故により頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の後遺障害を残したが、今回の交通事故により頸部打撲等の傷害を負い頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の後遺障害を残した」というような場合を考えてみます。
この場合、既存の後遺障害が該当する等級と現存する後遺障害の該当する等級とが同じですので、自賠責保険における後遺障害として評価されないと考えられます。
しかし、頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の場合、賠償実務上、症状固定日から5年から10年程度で就労への影響がほとんどなくなることが多いと考えられていて、賠償金算定時の逸失利益についても、通常は、3~5年程度しか認められていません。
そのため、1回目の交通事故発生から5年以上が経過しており、実際に、2回目の交通事故発生時点で、1回目の交通事故による後遺症による影響がほとんどないような状態であった場合には、訴訟を経ることで再度、後遺障害等級14級の認定を受けられる可能性があります(自賠責保険は認めません。)。
ご相談者のケースでは、自賠責保険では後遺障害等級の認定は受けられませんでしたが、民事訴訟を提起して主張・立証を尽くすことにより、後遺障害等級の認定を前提にした裁判上の和解(和解金約700万円)が成立しました。
複数回、交通事故に遭われている被害者の場合には、注意すべき事項が多いですので、弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士 桝田 泰司
コメント(0)
トラックバック(0)
プロフィール
当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
<<
2017年9月
>>
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
月間アーカイブ
2024年10月
2023年7月
2022年6月
2022年5月
2021年2月
2020年11月
2020年10月
2020年8月
2019年3月
2018年12月
2018年9月
2018年8月
2018年2月
2018年1月
2017年12月
2017年11月
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2015年11月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
カテゴリーアーカイブ
治療費
付添費用
将来介護費
通院交通費
通院交通費
休業損害
慰謝料
逸失利益
死亡事故
物損
素因減額
過失相殺
高次脳機能障害
整骨院・接骨院
後遺障害
自動車保険
セミナー等
最新記事
近時の自賠責保険の軽微事故への対応の変化(改悪)について
リハビリについての150日ルールについて
重度後遺障害に伴う将来の治療費等について
休業が連続していない場合の休業損害の算定方法について
勉強会の開催について-高齢主夫の休業損害-
個人事業主において、売上額や所得額に変動がない場合の休業損害について
兼業主婦の休業損害について
懲罰的損害賠償を認めた裁判例
物損についての慰謝料について
実通院日数が少ない場合の傷害慰謝料について
死亡事故における内縁の配偶者の慰謝料について
後遺障害等級14級が複数認定された場合の取扱について
ホステス、スポーツ選手など、特殊な職業の方の逸失利益について③
ホステス、スポーツ選手など、特殊な職業の方の逸失利益について②
ホステス、スポーツ選手など、特殊な職業の方の逸失利益について①
車両時価額の算定について
オートローンを組んで車両を購入した場合の車両修理費の請求について
代車使用の認められる相当期間について
心因的要因による素因減額
後縦靭帯骨化症を理由に素因減額を認めた裁判例-大阪地判平成16年8月16日-
後縦靭帯骨化症を理由に素因減額を認めた裁判例-大阪地判平成21年6月30日-
後縦靭帯の骨化等を理由に素因減額を認めた裁判例-東京地判平成13年4月24日-
加害者の保険会社から、「被害者側の過失」を主張された場合に、親族等の自賠責保険から保険金を先行して受領した際の充当関係について
自転車の通行ルールと過失割合
非接触事故の過失割合について
過失割合を判断する上で重要となる資料について
軽度外傷性脳損傷(MTBI)について
高次脳機能障害により成年後見人が選任された場合に注意すべきこと
整骨院への通院が認められる期間の目安
施術の必要性・効果の立証
自保ジャーナルNo.2099号に弊所で担当した事案が掲載されました
自保ジャーナルNo.2077号(令和3年1月14日発行)に、弊所で担当した事案が掲載されました
正面衝突、赤信号無視による激突等の大きな事故の際の後遺障害の見落としについて
交通事故の傷病により成年後見の申立を余儀なくされる場合について
任意保険における被害者の直接請求権について
所内検討会の実施について
札幌弁護士会主催の交通事故研修に講師として参加いたしました
交通事故事件の合同勉強会
自研センターでの研修
このブログを購読
Copyright (C)
交通事故は札幌の弁護士のさっぽろ大通法律事務所
All Rights Reserved.