交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

  • 2017年12月

車両時価額の算定について

2017/12/30

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交通事故によって車両が損傷を受けた場合、損傷を受けた車両の時価額が問題となってきます。
相手方保険会社から提示された時価額が低額で、「車両の買替ができない」とご相談にいらっしゃる方も少なくありません。
 
車両時価額は、交通事故による物的損害(代車費用等は除きます。)として、以下のいずれが支払われるべきか、を判断する指標となります。
 
①修理費用相当額
②車両時価額と買替諸費用(車両の消費税や検査登録費用等、車両を買い替えるにあたり必要となる費用)の合計額
 
すなわち、「②車両時価額+買替諸費用」が「①修理費用相当額」を超える場合には、修理費用相当額が支払われます。
他方、「②車両時価額+買替諸費用」が「①修理費用相当額」を下回る場合には、(経済的)全損として、「②車両時価額+買替諸費用」が支払われます。
(弁護士に依頼していない場合、保険会社は「車両時価額」の賠償のみを行うことが多いです。しかし、本来的には「車両時価額+買替諸費用」が賠償されるべき損害となりますので、注意が必要です。買替諸費用は、10万円を超えることも少なくありませんので、少額とはいえません。)
 
そのため、交通事故による物損において、車両時価額が適正に算定されることは非常に重要な問題です。
 
車両時価額は、最高裁判例において、
「原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得し得るに要する価額によって定めるべきであ」るとされています。
 
そして、中古車市場価格の算定においては、実務上、有限会社オートガイドが発行する『自動車価格月報』(レッドブックと呼ばれています。)が参考とされ、保険会社もこれを基に車両時価額を提示してくることが一般的です。
しかし、レッドブックに記載されている中古車市場価格は、中古車市場において一般に取引されている価格と比較すると、低額であることが多い印象です。
 
また、損傷を受けた車両が、初度登録から10年以上経過している場合、レッドブックに価格が出ていないこともあり、保険会社は車両時価額として「新車価格の10%」に相当する額を提示してくることがあります。
しかし、これも中古車市場において一般に取引されている価格と比較すると、低額であることが多い印象です。
 
適正な車両時価額を算定するにあたり、我々弁護士がよく参照するのが、中古車売買のインターネットサイトです(カーセンサーやグーネット等です)。
このインターネットサイトには、全国の中古車販売業者が販売している多くの中古車が掲載されており、現実の販売価格がリアルタイムに表示されています(まさに中古車市場において一般に取引されている価格ということになります。)。
 
中古車売買のインターネットサイトにおいて、被害に遭われた車両と同一の車種・年式・型、同程度の走行距離の車両を検索し、ヒットした複数の車両の平均本体価格を算定して、これを車両時価額として保険会社に提示することが多いです。
印象として、このようにして算定した車両時価額は、レッドブックに記載されている中古車市場価格や、「新車価格の10%」に相当する額と比較すると、高額であることが多いです。
 
この他にも、被害車両の初度登録年度が、比較的最近であり、修理代が一定額以上である場合には、評価損(格落ち損)の問題なども生じます。
 
適正な車両時価額を算定し、交通事故による物的損害の適正な賠償を得るためには、交通事故に精通した弁護士に依頼する必要がございます。
 
「保険会社から提示された車両時価額に納得がいかない」
「保険会社から提示された物的損害の賠償額が適正かどうかわからない」
等お困りの方は、お気軽にご相談ください。
 
弁護士 水梨雄太
 

個人事業主において、売上額や所得額に変動がない場合の休業損害について

2017/12/23

CIMG2260.JPGのサムネール画像のサムネール画像休業損害とは、被害者が事故による負傷の治療又は療養のために休業又は不十分な就業を余儀なくされ、それによって治療期間中に得られたはずの収入が得られなかったという、過去に得られたはずの利益を意味すると考えられています。
 
個人事業主の方が交通事故に遭われた事案において、治療期間の売上額や所得額が事故前とほとんど変わっていないという場合が見受けられます。
このような場合、加害者の保険会社は、収入が減っていないのであれば休業損害は発生していないなどと主張して、休業損害の賠償に応じてくれないことが多いように思われます。
 
しかしながら、以下のような場合には、休業損害の発生が認められて然るべきです。
①交通事故が発生していなければ事故前よりは多い売上額や所得額を得られたであろうといえる場合
②休業期間における売上額や所得額が事故前と変わっていなくとも、それが被害者の特段の努力によるといえる場合
③近い将来売上額や所得額が減少することが高度の蓋然性をもって予測できる場合
 
裁判官作成の文献よれば、個人事業主の休業損害について、裁判所は、例えば前年同期の売上額との比較、売上や仕入の相手方の変化や金額の変遷、事業主の勤務形態と業務遂行上の位置づけ等の視点から、事業主の提出する帳簿類とそれを説明する陳述書等を基礎資料とし、できる限り休業損害の実態を把握することに努めるという趣旨の記載があり、このような考え方は参考になります。
 
当職としては、できる限り正確に休業損害の実態を把握し、適正な賠償が実現されるよう、尽力していきたいと考えております。
個人事業主の方で休業損害についてご懸念がある場合は、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 桝田泰司

リハビリについての150日ルールについて

2017/12/18

benngoshi niwa.JPGのサムネール画像のサムネール画像
交通事故の被害者の方で、医師から、「事故から150日間しかリハビリを実施することができない」と説明されたと仰って相談にいらっしゃる方が時々いらっしゃいます。
 
リハビリについての150日ルールとは、健康保険を使用してリハビリを受ける場合の診療報酬を算定する際のルールです。
 
リハビリの対象となる部位に応じて、所定の点数が算定できる日数の上限が定められています。
交通事故で実施されることの多い運動器のリハビリの場合、発症から150日が一応の上限として定められています。
 
このルールに基づいて、「事故から150日しかリハビリはできませんよ。」と初診時から説明される医師もいらっしゃるようです。
 
交通事故の被害者の方にも一定の過失が認められる場合には、自己負担額を下げるべく、単価の低い健康保険を使用されているケースが少なくありません。
そのような場合は、このルールに抵触する恐れが出てきます。
 
もっとも、この150日のルールについても、例外が認められています。
「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」等には、150日を越えても、一定の限度でリハビリを継続することが認められています。
 
ただし、例外的にリハビリの継続が認められるケースでも、診療報酬算定にあたり所定の点数が算定されるのは、1ヶ月13単位(1単位20分)に限定されています。症状が重篤な場合、極めて不十分といわざるを得ません。
 
また、所定の点数についても、150日以前より低く設定されています。
そのため、医師というよりは病院単位で、経営の観点から、150日を越えてのリハビリには積極的でないように感じられることがあります。
 
したがいまして、健康保険を使用している場合には、151日目以降のリハビリをどうすべきか、一定の考慮が必要となります。
 
医師において、150日を越えてもリハビリを継続できる例外に該当すると診断してくれれば、1ヶ月13単位(1単位20分)と少ないですが、リハビリを継続することができます。
しかし、ほぼ治癒に至っているという場合以外、1ヶ月13単位(1単位20分)では不十分な場合が多いと思料されます。
 
また、前述のとおり、150日を越えると、診療報酬算定の基礎となる所定の点数が低く設定されているため、医師において、例外を認めることに積極的になりにくいということもあります。
 
それでは、医師が例外として認めてくれそうにない場合、あるいは、例外として認めてくれたものの1ヶ月13単位では不十分な場合、どのように対処すれば良いでしょうか。
 
(医師が例外として認めてくれそうにない場合とは、本来的にはリハビリの継続が必要であるものの、健康保険のルール上、診療報酬が下がってしまうことから、例外として認めてくれそうにない場合です。
医学的に純粋にリハビリの必要性がないという場合は、やむを得ないといえます。その場合は、症状が残存しているのであれば、症状固定として、リハビリを終了するほかないといえます。)
 
そのような場合、加害者の任意保険会社が一括対応を継続して治療費を支払ってくれている状況であれば、151日目以降、健康保険の使用を取り止めて、自由診療に切り替えて、リハビリを継続することが考えられます。
 
しかしながら、150日を越えてから自由診療に切り替えることに、任意保険会社が了解しないことも十分に考えられます。
 
自賠責保険の傷害分の120万円の枠が残っているケースでは、任意保険会社が認めないということであれば、一旦治療費を立て替えて、自賠責保険会社に被害者請求するということが理論的には考えられます(ただし、自由診療で毎回立て替えていくことは、金額が多額に及ぶことから、現実的には容易ではないです。)。
 
自賠責保険の枠が既にない場合は、一旦、自由診療で治療費を立て替えておいて、その領収書を保管しておき、最終的に、加害者の任意保険会社に請求していくということも考えられます(この場合、支払を受けられないリスクが残ってしまうことにはなります。)。
 
いずれにしても、難しい状況にあることは確かです。
 
また、上記のようなケースとは異なり、健康保険を使用していないにもかかわらず、医師において、150日ルールの説明をしてくることもあるように見受けられます。
 
このような場合、医師において、150日ルールが、健康保険を使用する際のルールであることを十分に理解されていないように感じられることが少なくありません。
その場合、150日ルールは、あくまで健康保険を使用するに際してのルールであり、自由診療を前提とした交通事故の治療には適用がないことを、丁寧に説明して理解して頂く必要があります。
 
ただ、病院として、一律、健康保険のルールにリハビリの上限を合わせてしまっている場合もあり得ます(確かに、自由診療を前提とした交通事故治療であろうが、健康保険を使用した治療であろうが、医学的なリハビリの必要性は変わらないはずともいえますので、全く不合理とはいえません。)。
病院のルールといわれてしまうと、苦しいところです。
 
そのような場合は、治療の途中で他の病院に転院することを考えるほかありません。
交通事故の治療において、途中で転院すると、症状が残存してしまった場合でも、「途中の経過が分からないので、後遺障害診断書は書けない」といわれてしまうことがあります。
 
また、後遺障害診断書を書いてくれる場合でも、最初の病院の医療記録の記載との不整合が生じることがあるなど、不利益が生じることが少なくないです。
そのため、治療途中での転院は、あまりお勧めはできないのですが、リハビリを機械的に150日で終了させられてしまうことによる不利益と比較考量して、方向性を定めるほかありません。
 
以上のように、リハビリの150日ルールを持ち出されると一筋縄ではいかないことが多いです。
150日ルールでお困りの際は、専門家にご相談されることをお勧め致します。
 
弁護士 丹羽 錬

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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