交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

任意保険における被害者の直接請求権について

2017/06/30

自賠責保険においては、仮に加害者が自賠責保険の使用を拒否したとしても、被害者の方は自賠責保険会社に対して、損害の賠償を直接請求することができます(自賠法16条)。
自賠責保険が強制加入の保険であり、被害者救済に主眼を置いていることの表れだといえます。
 
では、任意保険において、加害者が任意保険の使用を拒否している場合、被害者は任意保険会社に直接請求ができるのでしょうか。
 
任意保険は、自賠責保険によっては賄いきれない損害の賠償について、これを補うことが主たる目的の1つです。
しかし、任意保険は、保険会社と被保険者との任意の保険契約に基づくものですから、強制加入が義務づけられている自賠責保険の場合とは異なり、被保険者が使用を拒否した場合には、任意保険による損害の賠償を受けられないようにも思えます。
 
交通事故の加害者が任意保険に加入しているにもかかわらず、加害者がその使用を拒否している場合(保険を使用することで等級が上がってしまうこと等が理由として考えられます。)、被害者の方が、自賠責保険によっては賄いきれない損害を加害者の加入する任意保険によって補填してもらう方法はないのでしょうか。
 
また、物損について、加害者が任意保険の使用を拒否している場合、被害者の方が損害の賠償を受ける方法はないのでしょうか。
 
上記のようなケースにおいて、相手方の加入する任意保険会社から損害の賠償を受ける方法はあります。
 
任意保険においても、一般的に、被害者による直接請求権が約款に定められています。
 
以下、関係する約款の対人賠償の規定を抜粋します。
(確認したところ、大手の任意保険会社及びそのグループ会社の約款上、ほぼ同様に規定されています。対物についても、一部内容は異なりますが、同様に規定されています。詳しくは、各社約款をご参照ください。)。
 
第〇条(損害賠償請求権者の直接請求権)
 
⑴ 対人事故によって加害者に法律上の損害賠償責任が発生した場合、被害者は、任意保険会社が支払責任を負う限度において、任意保険会社に対して損害賠償額の支払を請求することができる。
 
⑵ 任意保険会社は、次のいずれかに該当する場合に、被害者に対して損害賠償額を支払う。
①損害賠償額について、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合。
②加害者が負担する損害賠償額について、加害者・被害者間で書面による合意が成立した場合。
③被害者が、加害者に損害賠償請求しないことを加害者に対して書面で承諾した場合。
④損害賠償額が対人保険金額を超えることが明らかになった場合。
 
「⑵の①②④」は、すなわち、直接請求のためには任意保険会社の支払責任の限度が明らかになっていることを要求しているものと考えられます。
「③」は、加害者と任意保険会社の両者に請求することによって生じる「二重払い」を防止するのが趣旨ではないかと考えられます。
 
以上のとおり、加害者が任意保険の使用を拒否している場合でも、一定の場合には、加害者の加入する任意保険から損害の賠償を受けることができます。
 
加害者が様々な事情により、任意保険を使用しないと強弁している事案の相談が稀にございます。
そのような場合でも加害者の了解を取ることなく、加害者の任意保険を使用する方法は存在します。
 
同じようなケースでお困りの方、手続について不明な方は、お気軽にご相談ください。
 
※インターネット上には、「加害者が任意保険の使用を拒否している場合、加害者の任意保険を使用することはできない」といった趣旨の記載が散見されます。注意が必要です。
 
弁護士 水梨雄太
 

オートローンを組んで車両を購入した場合の車両修理費の請求について

2017/06/25

最近、オートローンを組んで代金を分割支払いしている車両購入者から、車両修理費用等の損害賠償請求に関する相談を受けました。
 
オートローンを組んでいる場合、車両の所有権が信販会社等に留保されている(所有権留保特約付売買)ことが多く、車両購入者は所有者ではないと考えられることから、所有者ではない使用者が車両修理費用相当額の損害賠償請求をすることができるのかが問題となります。
 
使用者が、損傷した車両の修理をして、修理費用を自ら支払った後、修理費相当額の損害賠償請求をする場合、そのような請求は認められると考えられますので(民法422条の類推適用)、問題になるのは、使用者が修理をせず、修理費を支払わずに請求する場合です。
 
この点、従前の複数の裁判例において、所有権留保特約付売買の買主が、損傷した車両を修理して修理費相当額を負担する予定があるような場合には、当該買主の修理費用相当額の損害賠償請求が認められています(東京地裁平成26年11月25日判決など)。
 
従前の裁判例の中には、損傷の程度が高度であり修理不能な場合(物理的全損の場合)には、所有権留保特約付売買の売主に損害賠償請求権が帰属し、買主が残代金を支払った後、買主が損害賠償請求権を取得するという考え方を示すものがあり(東京地裁平成2年3月13日判決)、この点には注意が必要かと思われます。
 
オートローンを組んで代金を分割支払いされている車両購入者は少なくなく、交通事故による損害賠償請求の際に問題となることがあります。
このような場合には、所有権留保特約の有無、損傷の程度、今後の修理の予定などを確認する必要があると考えられます(なお、単純に車両を有償または無償で借りて運転していた際に交通事故に遭って当該車両が損傷してしまったような場合、前述した所有権留保特約付売買に関する考え方は当然には妥当しません。)。
 
以上、簡単ですが、最近検討した点をご報告いたします。
 
弁護士 桝田泰司

所内検討会

2017/06/16

当事務所では、交通事故事案について、毎月、所内検討会を行っています。
成功事例、新奇事例、困難事例等について、各自、発表して、情報を共有化することで事務所全体の力を高めています。
 
6月の所内検討会では、以下の事例が取り上げられました。
 
・自賠責非該当にもかかわらず、訴訟において、14級前提の和解が成立した事案
・自賠責非該当にもかかわらず、訴訟において、12級前提の和解が成立した事案
・TFCC損傷の事案
 ①自賠責非該当で、10級前提で訴訟提起している事案
 ②自賠責で、10級が認定された事案
 ③自賠責で、12級が認定された事案
 ④自賠責非該当で、これから異議申立を行う事案
・海外旅行中に交通事故被害に遭った事案
・主治医に後遺障害診断書の全面的な書き直しを依頼した事案
・保険会社の対応が明らかに不当な事案
 
TFCC損傷が問題となっている事案は、事務所内で、現時点だけで4件取り扱っており、後遺障害診断書の記載内容や自賠責の判断内容を比較することができました。
 
当事務所は交通事故に特化していますので、同じ傷病名での後遺障害の申請の仕方等を比較して検討することが出来ます。
TFCC損傷のような必ずしも一般的ではない傷病でも、一時に数件取り扱っている状況です。
一般的な頚椎捻挫、腰椎捻挫の後遺障害は常に数十件取り扱っている状況です。
 
定期的に所内検討会を開催して、情報を共有化して、ノウハウを蓄積することで、交通事故被害者のお力に少しでもなれるよう尽力しております。
 
弁護士 丹羽 錬

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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