交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

交通事故事件の合同勉強会

2022/05/24

令和4年5月10日に、札幌の交通事故に力を入れている複数の法律事務所が集まって合同勉強会(ズーム使用)が開催されました。
定期的に、3ヶ月に1回程度の頻度で合同勉強会を開催して、交通事故実務についての研鑽を深めています。
 
今回は弊所の弁護士が以下のテーマで発表を行いました。
・自賠責と労災で後遺障害等級が異なった場合の裁判所の判断等
・自賠責保険共済紛争処理機構で判断が覆った事例
・素因減額の主張に対して先行自白を援用した事例
 
自賠責保険と労災保険で、認定される後遺障害等級が異なることが少なくなく、その実情、訴訟になった場合の裁判所の判断等について、40近い裁判例を分析した結果を発表しました。
また、自賠責保険共済紛争処理機構への調停申し立てにより当初の自賠責保険の判断が変更された事例、相手方の素因減額の主張に対して先行自白を援用した場合に後遺障害が認定された事例についての報告を行いました。
 
平日の夜間の開催でしたが、活発な質疑応答、議論が行われて、全体で2時間半くらいの勉強会となりました。
 
勉強会での発表のために裁判例等を精査分析して準備をすることは、弁護士としての実力を養うことに非常に役立ちます。
また、勉強会で他の弁護士の事件の進め方等を聴くことは、刺激を受けることも多く、実践的な事件処理の研鑽に大きく寄与することが多いです。
 
弊所では、この合同勉強会以外にも、定期的に所内検討会を開催して、事案の共有等を行っています。
また、週2回の所内勉強会で実務書の輪読等を行って、実務の最新情報を押さえるようにしています。

自賠責保険と労災保険で後遺障害等級が異なった場合の詳細はこちら
 
弁護士 丹羽 錬
 

自保ジャーナルNo.2077号(令和3年1月14日発行)に、弊所で担当した事案が掲載されました

2021/02/05

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むち打ちによる自賠責14級9号の認定に留まった被害者について、札幌地方裁判所が12級13号を認定したケースです(札幌地裁令和2年3月27日判決)。
 
提訴から、約2年2ヶ月、16回の期日を経て、当方の請求した後遺障害等級が認定されました。
解決までかなりの時間を要しましたが、被害者の方もご納得のいく判決を獲得することができました。
本件は控訴されて高裁でも争いになりましたが、12級13号の後遺障害を前提とした和解で解決致しました。
 

事案の概要

被害者の方が車両に乗車して走行中に後方から追突されたという事故態様でした。
事故により、頚肩部痛、右上肢の痺れ等の症状が発症して、約11ヶ月の治療を継続したものの、症状が残存したというケースでした。
 
自賠責保険で14級9号が認定されたものの、症状が強く就労に支障が出ているとのことで、異議申立(再申請)を行いましたが、等級変更はなされませんでした。
 
そこで、被害者の方と相談して、訴訟に踏み切ることと致しました。
自覚症状を裏付ける画像所見があり、神経学的所見も一定程度存在する状況でしたので、裁判官によっては、12級を認定する可能性があると見通しを立てました。
 
自賠責保険の認定を超える請求となりましたので、相手方からは熾烈に争われました。
相手方からは、3人の医師による意見書が提出され、後遺障害は14級に留まるとの主張が執拗になされました。
 
当方においても、外部の画像鑑定機関に複数依頼して、さらに外部の整形外科医に意見書の作成を依頼するなどして、的確に対応していきました。
 
その結果、最終的に、12級13号を認める判決を獲得することができました。
 

認定の要因

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裁判官が12級13号に該当すると判断した要因は以下のとおりと分析しています。
 
①被害の実態が大きかったこと
被害者の方は、右上肢の痺れ等の影響もあり、事故前から20年以上勤めていた仕事を辞めざるを得なくなりました。そのため、収入が3分の2程度になっていました。
事故による、経済的な損失は、12級が認定されても補えない程度に膨らんでいました。
この事実が大きかったように思います。
②症状を裏付ける画像所見が存在したこと
③症状を裏付ける神経学的所見が存在したこと
 
12級13号については「局部に頑固な神経症状を残すもの」と規定されているだけで、その具体的な認定要件が、明確に定められているわけではありません。
そのため、裁判官からすれば、14級9号でも、12級13号でも、どちらでも判決を書けるという事案が少なくないと思料されます。
本件も、恐らくは、14級9号でも、12級13号でもどちらでも、判決を書くことができたのではないかと推測されます。
 
そういった場合に、裁判官の心を動かすのは、やはり就労への実際の影響、収入の減少、転職を余儀なくされた事実などの被害の実態です。
当該事故により、実際に、被害者の方が、どれだけの被害を被っているのか、それを丁寧に主張立証して、訴訟で明らかにしていくことが肝要です。
 
医学的な主張を幾ら積み重ねても、画像も神経学的所見も、評価が分かれることが少なくないです。
まして、裁判官は医師ではないので、医学的には素人といわざるを得ません。
ギリギリと詰めていって、医師の判断が分かれているような場合、厳格な判断はできないといわざるを得ません。
そのため、医学的な主張・立証は必ずしも決定打にはならないことが多いです。
 
医師の判断が割れているような状況下、大事なことは、裁判官に、「この事案の被害者は助けなければならない」と思わせることです。
 
弊所では、医学的主張を積み上げることはもちろん致しますが、被害の実態を明らかにすることにも力を注いでいます。
それが、裁判官には圧倒的な説得力を持つからです。
 
自賠責保険の判断がどうしても納得いかないという場合、全ての事案が裁判所で覆るというわけではないですが、裁判所で覆る見込みが有るかどうかはある程度見通しが立つことも少なくないです。
 
自賠責で非該当の判断が示された、あるいは認定されたものの等級に納得がいかないという場合は、裁判所に直接、後遺障害等級を認定してもらうという手法もあり得ます。
ご懸念がある場合は、お気軽にご相談頂きましたら幸いです。
 
弁護士 丹羽 錬

正面衝突、赤信号無視による激突等の大きな事故の際の後遺障害の見落としについて

2020/11/29

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弊所で数多くの交通事故事案を取り扱っていますと、ご相談に来て頂いた時点で、後遺障害がすっぽりと見逃されてしまっているケースを目にすることがあります。
 
特に正面衝突、加害者の赤信号無視による激突のような大きな事故に遭われて、救急搬送されて、相当期間の入院をされたような場合に、後遺障害が見逃されていることが散見される印象を持っております。
 

見逃しの類型

以下のような類型に分類できます。

1 診断名自体が漏れてしまっているケース

大きな事故で、多数の部位に重度の怪我を負ってしまったような場合、医師は、骨折等の外傷が顕著な部分だけに診断名を付けて、それ以外の部分について、何らの診断名が付けられていないことがあります。
あるいは、骨折等の顕著な部分以外は、全身打撲等の大ざっぱな診断名が付けられていて、頚椎捻挫、腰椎捻挫等の細かな診断名が付いていないことがあります。
このような場合には、その骨折等の顕著な診断名の部分に、後遺障害が残らない限り、それ以外の後遺障害が見逃されてしまうことが起きてしまいます。
 

2 症状が残っているものの後遺障害診断書が作成されていないケース

診断名自体は付けられていても、主治医においては、一応の生活が出来る程度に身体が回復したことで、十分と考えてしまうのか、後遺障害診断書が作成されていないことがあります。
この場合、後遺障害診断書が作成されていない以上、後遺障害は残っていないものとして扱われてしまいます。
 

3 後遺障害診断書は作成されているものの、一部の症状が抜け落ちてしまっているケース

後遺障害診断書自体は作成されているものの、骨折等の外傷が顕著な部分に起因した症状だけが記載されていて、それ以外の症状が、すっぽりと抜け落ちてしまっていることがあります。
この場合、後遺障害自体は認定されうるのですが、一部の症状がそもそも審査の対象になっていないので、見落とされてしまうことになります。
 

見落とされる原因について

1 医師は治療の専門家ではあるものの後遺障害の専門家では必ずしもない

医師は治療についての専門家ですが、後遺障害については必ずしも精通していないという実情があります。
そのため、どのような症状が残存していたら、どういう後遺障害が認定されるのか、正確に把握されていないことが多いです。
それ故に、一部の症状が見逃されるということが起きてしまいます。
 

2 医師によっては「日常生活が一応送れる程度まで回復すれば十分」と考えてしまっている節がある

命が助かっただけでも良かったというような大きな事故の場合、医師によっては、日常生活が一応送れる程度まで回復すれば十分と考えてしまっているような印象を受けることがあります。
そのような場合は、身体の一部に痛みや痺れが残っていたとしても、見逃されてしまうことになります。
 

3 医師は専門外の領域に関与しようとしない傾向がある

交通事故の症状は、多くの場合、整形外科の領域に留まります。
ただ、大きな事故の場合、脳神経外科、耳鼻科、形成外科等、多数の分野に及ぶことが少なくないです。
しかし、医師は自分の専門外の領域には関与しようとしない傾向が強いですので、骨折等の整形外科的な傷病がメインの場合、それ以外の症状が見逃されがちです。
 

後遺障害が見逃されてしまうと、どうなってしまうか

弁護士が介入しない場合は、通常、加害者の保険会社が後遺障害の申請を行うことになります。
加害者の任意保険会社は、被害者の方が病院から取り付けた後遺障害診断書を、最低限の資料を整えて、自賠責保険会社に提出するだけです。
(非常に稀に加害者の保険会社にも善良な方が居て、指摘してくれることがありますが、通常は期待できません。)
 
そうすると、一部の症状が抜け落ちていても、誰も何も指摘してくれません。
仮に、後遺障害診断書自体が作成されていなければ、後遺障害はないものとして取り扱われることになります。
 
後遺障害の審査を行う札幌自賠責損害調査事務所では、送られてきた後遺障害診断書を元に調査をします。
基本的に書面審査です。
面談での審査は醜状障害以外では基本的に行われていません。
そのため、後遺障害診断書に記載が漏れてしまっている症状について、調査がなされることは基本的にありません。
 
したがって、後遺障害診断書が作成されていない、ないしは一部の症状が抜け落ちている場合は、そのままになってしまいます。
 
現状、被害者の方が受領できる賠償金の多くが後遺障害に関するものとなっていますので、被害者の方は、被害に見合った適正な賠償を受けられないということになってしまいます。
 

弁護士が介入した場合

弊所では、治療の終了時に、自覚症状が残っていないか必ず確認します。
大きな事故の場合には特に念入りに確認するようにしております。
そして、自覚症状が残っている場合は、後遺障害申請することを助言します。
 
また、医師が作成した後遺障害診断書についても、記載内容を精査して、記載の抜け、漏れがないか必ず確認します。
もし、自覚症状が漏れていれば、医師に追記をお願いしますし、必要な検査が実施されていなければ、改めて、検査を実施してもらうことになります。
 
大きな事故に遭われて後遺障害が心配な場合は、お早めにご相談頂くことをお勧め致します。
治療終了前の方が確実ですが、示談前であれば、治療が終わってしまっていても、医師にお願いして、遡って、後遺障害診断書を書いてもらうことができることもあります。
 
示談後であっても、加害者の保険会社に提出した示談書(免責証書)に、「将来、乙(被害者)に後遺障害が認定された場合は別途協議する。」といった趣旨の記載がなされていれば何とかなる場合もあります。
 
正面衝突や赤信号無視による激突等の大きな事故に遭われて、後遺障害について、ご懸念があるような場合は、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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