交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

高次脳機能障害により成年後見人が選任された場合に注意すべきこと

2015/04/09

交通事故の被害者の方が、事故により発症した高次脳機能障害等を原因として、事理弁識能力を欠く状態となり、被害者の方に成年後見人が選任されるということがあります。
 
その場合、成年後見人が選任されたことに伴い、成年後見人の申立手続費用(申立手数料、登記費用、予納郵券等)、鑑定費用、申立手続を弁護士に委任した場合における弁護士費用、後見人報酬、後見監督人報酬等を被害者の方が支払わざるを得ないという事態が発生します。
 
しかしながら、これらの費用については、事故に遭わなければ当然、発生するものではありませんので、加害者に対して請求していくこととなります。
 
これらの費用の取り扱いについて、赤本平成24年版の講演録に小河原裁判官の発言が、大要、以下のとおり、記載されています。
 
1 成年後見人の申立手続費用(申立手数料、登記費用、予納郵券等)
  →事故と相当因果関係のある損害
 
2 鑑定費用
  →事故と相当因果関係のある損害
 
3 申立手続を弁護士に委任した場合における弁護士費用
  →事故と相当因果関係のある損害とすることは困難
   弁護士に委任せずとも申立は可能
 
4 後見人報酬
  →事故と相当因果関係のある損害
 
5 後見監督人報酬
  →事故と相当因果関係のある損害
 
4、5については、既に報酬決定がされて、支払いがされている場合は、算定しやすいのですが、未だ、1度も報酬決定がなされていない場合には、具体的な金額をいくらにするかが問題となります。
 
小河原裁判官は、東京家裁の「成年後見人等の報酬額のめやす」を引用して、以下の金額が一つの目安になるとされています。
 
・後見人報酬  →月額2万円
・後見監督人報酬→管理財産5000万円以下:月額1~2万円
         管理財産5000万円超:月額2万5000円~3万円
 
後見監督人報酬については、被害者代理人の立場とすれば、管理財産が5000万円以下の場合には、上限の2万円、管理財産が5000万円超の場合には、上限の3万円で算定して、請求することになると思われます。
 
1点、考慮が必要なのは、後見監督人報酬です。
訴訟進行中に、既に成年後見人が就いている場合には、その成年後見人に関する費用に関しては、損害として計上し損ねることは考えにくいところです。
 
しかしながら、後見監督人は、訴訟が和解ないし判決で終結して、現実に、損害賠償金が加害者の保険会社から入金された後に、選任されます。
 
そうすると、和解案が裁判所から提示されたぐらいの段階で、実際の賠償額の見込みが立ちますので、後見監督人が選任されるか否かの予想が付きます。
そこで、この段階で、おおよその賠償金の見込みを家庭裁判所に伝えて、後見監督人が選任されるか否かを確認して、選任されるということであれば、将来の後見監督人の報酬について、訴えを拡張する必要があります。
 
もちろん、訴訟提起時に、請求額を前提として、後見監督人の選任の有無の予想をして、最初から、請求に含めるという方法もありますが、印紙代のことを考慮すると、和解案が出るくらいの裁判の帰趨がはっきりした時点で、訴えを拡張するという方法が、合理的と考えることができます。
 
いずれにしても、重要なことは、事故により成年後見人が選任されたという場合であれば、この成年後見に関する費用を確実に、損害として計上することです。


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整骨院への通院が認められる期間の目安

2015/03/25

交通事故の被害者の方が整骨院ないし接骨院に通院される際、通院期間が問題となることが少なくありません。
 
これについて、平成14年11月2日の講演で、裁判官が整骨院ないし接骨院への通院期間について、一つの考え方を明示しています。
「施術期間は、初療の日から6ヶ月を一応の目安としたらどうでしょうか」として、6ヶ月という数字を提示されています。
さらに、「施術の必要性の立証ができれば、これを超える期間についての施術を認めるべきでしょう」とされています。
 
金額についても、言及しており、労災の1.5~2倍を上限の目安としてはどうかと提言されています。
 
通院期間の相当性については、事故の大きさにも影響されると考えられますが、裁判官が6ヶ月という具体的な期間を提示している意味は大きいです。
特に、東京地裁民事27部という交通専門部の裁判官による発言ですから尚更です。
 
この講演の記録は、交通事故に携わる実務家が必ず目にしている、いわゆる赤本に講演録として掲載されていますので、裁判官、弁護士はもとより保険会社の担当者も当然目にしているはずです。
 
そういう意味では、保険会社の担当者からの短期間での打ち切りに対して、反論する有力な材料といえます。


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施術の必要性・効果の立証

2015/03/19

交通事故における整骨院の施術費が問題となった事案において、注意を要する裁判例の紹介です。

大分地裁平成25年9月20日判決は、加害者の保険会社が治療中に一旦、施術費を立て替えて支払っていたにもかかわらず、最終的に、事故との相当因果関係がないとして、施術費の賠償を否定しました。

本判決は、被害者の方が、信号待ち停車中に後ろから追突され、頚椎捻挫等で、約7ヶ月間通院された事案です。

被害者の方は、平成23年1月~7月まで、加害者が加入していたF共済担当者の了解を得て、D整骨院に通院して、6月分までの45万4420円は、一旦、F共済が負担していました。
 
ところが、訴訟提起後、加害者の弁護士が、一旦、F共済にて、支払い済みのD整骨院の施術費45万4420円について、事故と因果関係がないと主張してきたものです。

被害者側の弁護士も、禁反言に反し、信義則上許されない等と反論をしています。
  
大分地方裁判所は、最終的に
①医師の指示がない
②施術の効果を裏付ける医学的根拠がない
等として、D整骨院の施術費の事故との因果関係を否定しました。

このように、治療段階で、相手方保険会社から支払がなされていても、裁判に至った場合、事故との相当因果関係が否定されることがあります。

レアな裁判例だとは思われますが、整骨院の施術費が裁判で問題となった場合には、施術録の記載などから、施術の必要性・効果を丁寧に立証する必要があります。

注意が必要な裁判例といえます。

ちなみに、この地裁の判断は、福岡高裁でも維持されています。


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