骨折後の可動域制限
骨折後、関節の動きが悪くなり、関節の可動域制限が残ってしまうことは少なくありません。
関節可動域の測定には、被害者が自発的に曲げる自動運動を測定するものと、医師が手を添えて曲げる他動運動を測定するものがありますが、後遺障害の認定には、原則として他動運動が採用されます。
測定は医師が行うのですが、必ずしも可動域の測定に精通しない医師も少なくなく、被害者の疼痛を全く無視して無理やり押し曲げて他動運動を測定する医師もいらっしゃるようです。
つまり、同じ状況であったとしても、医師によって、測定結果が異なるということが生じうるのです。
機能障害は、健康な側の可動域の2分の1ないし4分の1に該当するか否かで、機械的に判定が下されますので、わずか5度の測定の違いで、数百万円以上賠償金が異なることも少なくありません。
適正な測定を受ける必要性が高いことに注意が必要です。
また、被害者の方は、総じて、治療をできるだけ長く受けることを希望されることが多いのですが、後遺障害認定との関係では必ずしも、長く治療を受ければプラスに働くとは言い切れません。適切な時期に症状固定の診断を受けることが必要になる場合もあります。
医師から、事故後6ヶ月程度で症状固定(治療を受けてもこれ以上症状の改善が望めない状態)の診断を受けたケースと、2年も3年も通院を続けて、その後に症状固定の診断を受けたケースとでは、可動域制限の程度に違いが出ることもありえます。
医学的に厳密な意味で、いずれの時点が症状固定時期なのかを確定することは難しい問題になりますが、少なくとも、後遺障害認定においては、通院を長く続ければ続けるほど、必ずしもプラスになるとはいえませんので、骨折等における症状固定の時期については、注意が必要です。
訴訟提起にあたり、検討を要する事項
可動域制限による後遺障害が自賠責保険で認定された事案において、訴訟提起をするか否か検討する際には、以下の事項の調査は必須です。
①症状固定時の可動域と診療録等の医療記録に記載された可動域に違いがないか。
違いがある場合には、それが合理的に説明できるのか。
②主要運動ではなく、参考運動による認定ではないか。
③就労ないし収入への影響の実態(収入が事故後、短期的に増加していないか。)
詳細は、以下のページをご確認下さい。