高次脳機能障害の看視・介護
高次脳機能障害の被害者においては、身体介護の必要性が乏しい場合であっても、記憶障害、遂行機能障害、注意障害、社会的行動障害等の多彩な症状の影響により、日常生活において、看視・介護が必要な場合が少なくありません。
後遺障害等級1級と2級は、看視・介護が前提となっており、3級以下との大きな違いとなっています。
しかしながら、後遺障害等級3級以下の場合においても、前述の多彩な症状に対応するために、日常生活に看視・介護が必要な場合も少なくなく、裁判においても、一定額の看視・介護費用が認められることも珍しいことではありません。
看視・介護に要する費用は、以下のとおり、親族等の近親者による介護と職業付添人による介護により大きく異なります。
近親者による介護の場合 日額8000円程度
職業付添人による介護の場合 実費(日額1万8000円程度が目安ですが、日額2万円を超えるような裁判例もあります。)
裁判例で散見されるケースは、近親者による看視ないし介護が近親者が67歳になるまで続き、その後は職業付添人による看視ないし介護を前提として費用が算定されるというものです。
具体的な看視・介護の費用の算定方法は、以下のとおりです。
算定方法
介護費用日額×365日×介護期間に対応するライプニッツ係数
計算例
症状固定時30歳男性で、職業付添人介護の場合(平均余命50年)
1万8000円×365日×18.2559=1億1994万1263円
看視・介護の費用は、上記のとおり、1億円を超えるようなことも少なくなく、被害者の損害賠償額の大部分を占める結果となることもあります。
そのため、後遺障害等級1級や2級に認定された場合であっても、その内容・金額について、保険会社が強く争ってくることが少なくありません。
後遺障害等級3級や5級の場合には、保険会社は、通常、看視・介護の必要性はないと主張してきますので、裁判において、的確に主張・立証を行う必要があります。
現実の日常生活への影響等により、幅がありますが、近時は3級や5級と認定された被害者において、裁判で看視・介護が認められる場合、3級で日額3000円~5000円程度、5級で日額1000円~3000円程度の看視・介護費用が認定される傾向が見受けられます。3級や5級の場合、看視・介護費用が当然認められるというわけではありませんので、日常生活における障害の状況を裁判所に十分に理解してもらう必要があります。
そのためには、主治医の協力が不可欠であり、場合によっては、日常生活の状況をビデオ撮影して、証拠として提出することも必要になってきます。
高次脳機能障害で5級以上の等級が認定された場合、看視・介護の必要性が争点になることが多いですので、高次脳機能障害に造詣の深い弁護士に相談されることをお勧め致します。