神戸地裁昭和62年9月2日判決
事案の概要
昭和59年11月24日 受傷(交差点を直進中の被害車両に乗車中、左方から直進してきた加害車両に衝突された事故)
平成61年 8月 9日 症状固定
診断名
頚椎捻挫、腹部打撲、頭部挫創
裁判所の判断
自賠責保険では後遺障害について、非該当と判断されているものの、原告の頚部痛、両肩こり、頭痛、右上肢の脱力感等について、後遺障害等級14級10号に該当すると判断しています。
判断の根拠
裁判所は、以下の事情を挙げて、原告の症状について、後遺障害等級14級に該当するとしています。
①頚部捻挫型の症状であるから他覚所見が存在しなくてもやむを得ない
②治療初期には、頚部痛、耳鳴り、右手のしびれ、握力低下があった
それ以外にも、以下の事情が裁判官の心証に影響を与えたと判断されます。
①事故後、症状固定まで1年8ヶ月もの間、通院を継続していること
②事故直後、頭部挫創について縫合手術を行っていること
本件は、症状固定まで約8.5ヶ月とそれほど長期間ではなく、自覚症状を裏付ける他覚所見も脆弱であることからすると、後遺障害等級14級が認定される限界事例といえます。
判決書だけからでは分かりませんが、本人尋問の結果が裁判官の心証に大きな影響を与えたのかも知れません。
ただ、事故前に経営していたカラオケ喫茶を閉店しているという事実は、裁判官の心証に大きな影響を与えたであろうことは推測されます。