東京地裁平成6年5月24日判決
事案の概要
平成3年 3月 3日 受傷(横断歩道を横断中の自転車と左折してきた加害車両が衝突した事故態様)
平成3年 3月 4日 退院
平成3年10月 7日 症状固定
診断名
左大腿・下腿打撲傷、頚椎捻挫、左上腕打撲傷、腰部打撲傷
裁判所の判断
自賠責保険では後遺障害について、非該当と判断されているものの、原告の左腰部、左大腿部の痛み等について、後遺障害等級14級10号に該当すると判断しています。
判断の根拠
裁判所は、以下の事情を挙げて、原告の症状について、後遺障害等級14級10号に該当するとしています。
①医師が原告について、左第5神経根症を発症しており、左大腿部痛が起きたと考えられると判断していること。
②左第5神経根症は、交通事故の際に打撲等、腰部の急激なねじれや圧迫によって生ずることが多く、原告も本件事故により左第5神経根症を発症したと認められること。
それ以外にも、以下の事情が裁判官の心証に影響を与えたと判断されます。
①自転車対車の事故であり、被害者が事故時に相当の衝撃を受けていること
②被害者が救急搬送されて、1日ではあるものの入院を余儀なくされていること
③被害者が事故後、代替労働力を雇っており、就労困難な状態が続いていたこと
本件は、症状固定までの期間も約7ヶ月と比較的短く、後遺障害が認定された決定的な事情は、判決書からだけでは読み取れない印象があります。
本人尋問における原告本人の証言が、裁判官の心証に大きな影響を与えられたのかもしれません。
また、14級に該当するか否かという判断は、法律により明確な認定要件が定められている訳ではありません。そのため裁判官の当たり外れも残念ながら影響します。
本件では、被害者救済の志の高い裁判官に判断してもらえたということもあるのかもしれません。