大阪地裁平成10年10月13日判決
事案の概要
平成7年 2月 4日 受傷(交差点を直進中の自転車と左方から直進してきた加害車両が衝突した事故態様)
平成7年 7月13日 症状固定
診断名
頚部捻挫、左手擦過傷、腰部打撲、左側頭部挫傷
裁判所の判断
自賠責保険では後遺障害について、非該当と判断されているものの、原告の右上肢の痺れ等について、後遺障害等級14級10号に該当すると判断しています。
判断の根拠
裁判所は、以下の事情を挙げて、原告の症状について、後遺障害等級14級10号に該当するとしています。
①X線検査上、原告には、第4ないし第6頚椎に変形があり、その間の狭小化が認められること。
②原告には本件事故前から頚椎第4、5、6の変形及びこれらの椎間の狭小化があったところ、右脆弱な部位に本件事故による衝撃が加わったことにより、右部位付近の神経根に圧迫ないし刺激が加わったか、あるいは脊髄の中心部の神経線維の過伸展損傷が起こり、このため、上肢の痺れ感を来たしたものと認めることができること。
それ以外にも、原告が事故から症状固定日まで休業を余儀なくされていることは、裁判官の心証に影響を与えたと判断されます。
本件では、裁判官が症状の発症のメカニズムを比較的詳細に分かりやすく認定しています。
経年性の変性がある脆弱な部位に事故の衝撃が加わって、症状が発症したという内容です。
一定程度の年齢の被害者においては、少なからず経年性の変性が存在していることが多く、そこに事故の衝撃が加わって、初めて症状が発症するということが少なくありません。
本件の裁判官のように、症状の発症のメカニズムについて、明確に認定してくれることは少ないので、そういう意味で、大変参考になる裁判例といえます。