大阪地裁平成22年4月15日判決
事案の概要
平成19年 3月14日 受傷(センターオーバーによる正面衝突)
平成19年10月31日 症状固定(自賠責14級認定)
自賠責保険の判断
自賠責保険は、頚部痛、両肩甲骨の圧痛、右肩関節の挙上時痛について、後遺障害等級14級を認定しています。
原告は、後遺障害等級14級を前提として、既払い金を控除して、金473万0313円を求めて、訴えを提起しています。
裁判所の判断
裁判所は、
①原告が平成19年5月にゴルフコンペに参加して、18ホールラウンドしていたこと
②主治医が原告の症状は緩解の可能性があると診断していること
を理由として挙げて、後遺障害の存在を否定しています。
当然ですが、その結果、後遺障害慰謝料も後遺障害逸失利益も否定されています。
弁護士の所感
理由として、明示はされていませんが、明確な他覚所見がなかったことも裁判官の心証に影響を与えたであろう事が推測されます。
本件では、訴訟前に交通事故紛争処理センターに申立がなされており、そこでは、金299万5008円の裁定がなされています。
金額からすると、恐らく、14級前提で、後遺障害慰謝料が認められて、逸失利益についても、相当程度が認められていたと推測されます。
それが、訴訟を提起した結果、金6万2269円の認容額に留まっています。
訴訟提起すると、一般には遅延損害金と弁護士費用が付加されるため、任意交渉の場合より、賠償金の額は増えることが多いのですが、本件のような事案もありますので、注意が必要です。
担当した弁護士は、恐らく、訴訟提起時点では、受傷2ヶ月後にゴルフコンペに参加して、18ホールラウンドしていたことは聞かされていなかったと推測されます。
また、緩解の可能性があるという医療記録の記載も目にしていなかった可能性があります。
訴訟提起前に、原告と担当弁護士が、不利な事実も含めて、入念に打合せをして、医療記録も取り寄せて分析したうえで、方針を決めるべきであったといえる事案です。