東京地裁昭和61年2月21日判決
事案の概要
昭和55年10月13日 受傷(後部座席に乗車中、交差点で右方から衝突された)
昭和57年1月27日 症状固定(固定時50歳)
診断名
右前腕骨骨折
右正中神経麻痺
右手指機能障害
自賠責保険の判断
→10級の認定(喪失率27%)
(可動域について記載がないため、具体的な認定内容は不明)
右手関節部:可動域が背屈、掌屈とも著しく狭められる
前腕 :回内、回外極めて悪い
右手指 :2~4指の屈曲位拘縮が回復せず、指巧緻性なし
裁判所の判断(逸失利益)
喪失率 :15%
喪失期間:17年(67歳まで)
事故時の職業:三菱銀行西荻窪支店長(年収約1300万円)
事故の影響で、外国銀行への出向を断らざるを得なかったため、他のものと比べて200万円ほど減収
10級相当の喪失率27%としなかった理由の明記なし。
弁護士の所感
実際の減収の割合は、13.33%(1500万円→1300万円)であったため、それを考慮して、喪失率を15%にしたのではないかと思われます。
恐らくは、銀行の支店長のような管理職(出向後も管理職と予想される)のものについては、可動域制限による労働への影響が少ないと判断されてしまったものと思われます。
実際の減収、具体的な就労への影響をみられて、控え目な認定をされてしまうと、本件のような結論になりうる事案と判断されます。
結果論にはなりますが、任意交渉、交通事故紛争処理センターへの申立により、一定の金額の譲歩案が出てくれば、訴訟にしないという選択もありえた事案かもしれません。
可動域制限による支障が影響しやすい職業か否かは、事前に入念に検討する必要があるといえます。