交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

  • 逸失利益

ホステス、スポーツ選手など、特殊な職業の方の逸失利益について①

2015/06/09

交通事故により、後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害の影響による労働能力の低下について、将来の逸失利益が損害として認められています。
 
一般的には以下のような数式で、逸失利益は算定されています。
 
事故前の現実収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間
 
労働能力喪失期間については、通常、67歳までと考えられています。
しかし、ホステスやスポーツ選手など、基本的に一定年齢までが、高収入で、一定年齢を過ぎると、若い頃の収入を維持することが困難ともいえる職業に就いている人々の労働能力喪失期間については、若干の検討が必要といえます。
 
実際、裁判例においては、流行に左右される職業あるいは年齢的な制限のある職業等については、その職業に基づく収入を一定期間まで認めて、それ以後は、賃金センサス等の平均賃金を参考に逸失利益を算定するという手法が散見されます。
 
平成11年11月22日付けのいわゆる三庁合同提言においては、高校卒業後すぐにプロ野球の選手となり、一軍で活躍している28歳の男子で、事故前の年収が6000万円の事例について、
「6000万円という高収入は、プロ野球選手だから得られるところ、少なくとも30歳代前半まではプロ野球選手として活躍できるものと考えられるから、28歳から32歳までの5年間は年収6000万円を基礎収入として、その後はプロ野球選手を引退することを前提として、何か統計的な数字があればともかく、そうでなければ、全年齢平均賃金を基礎収入として67歳までの逸失利益を算定する。」とされています。


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症状固定時期が争われる場合③

2015/06/08

-加害者側が、後遺障害診断書に記載された症状固定日には症状固定していないとして、その時点の可動域制限や状態より改善していることを主張して、逸失利益・後遺障害慰謝料の一部について、争ってくる場合-
 
加害者がこのような争い方をするのは、更に治療を継続すれば、より軽度な後遺障害しか残らない可能性があるからです。
特に治療方法として、手術などが考えられる場合には、大幅な改善もあり得ないわけではないため、問題となります。
 
このような場合、手術等の治療方法が身体に与える負担を考慮すると、手術等を受けたくないという被害者の意思を尊重する必要があります。
したがいまして、基本的には症状固定を肯定した上で、因果関係の制限又は、過失相殺による減額により公平な結論を導くというのが基本的な裁判所の考え方といえます。
 
この因果関係の制限や過失相殺による減額を行うべきか否かの考慮要素について、髙木健司裁判官は、2013年赤本講演録において
①これまでの治療経過及び症状経過
②今後の治療継続による改善の可能性の程度
③治療方法の一般性の程度
④治療方法の身体への負担の程度
⑤現在の症状
⑥医師の判断等
を挙げられています。
 
ただし、減額されるにしても、その対象は後遺障害に係る損害に限定されるべきです。
 
【東京地判平成24年3月16日判決】
この事案は、交通事故により橈骨遠位端骨折を負った被害者が、橈骨の変形治癒により、後遺障害等級10級に相当する可動域制限が残ったというものです。
 
加害者側は、変形矯正手術により、症状の改善が合理的に期待できるから、未だ症状が固定していないとして、症状固定の事実を争いました。
 
裁判所は、手術は身体への侵襲を伴うので、被害者に手術を強制することはできない等として、医師の判断のとおり症状固定に至ったことを前提に、10級の後遺障害等級に該当することを認めました。
 
しかしながら、手関節の変形癒合が生じたのは、適切な時期に手術を受けなかったことが原因であるとして、90%の限度で交通事故と相当因果関係のある損害と認めました。
 
このように、他に治療方法があるから未だ症状固定していないと争われたような場合には、前述の裁判官が挙げられている①~⑥の要素を丁寧に主張・立証して、加害者側が主張するような治療方法を選択しないという判断が合理的なものであることを裁判官に納得してもらう必要があるといえます。
 
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症状固定時期が争われる場合②

2015/06/07

-加害者側が、後遺障害診断書に記載された症状固定日より、もっと早い時期に症状固定していると主張して、治療費・通院慰謝料・休業損害の一部について、争ってくる場合-
 
症状固定とは、治療の効果が期待できない状態を意味しますので、症状固定日以降の治療については、効果がなく、症状の改善に繋がるものではないということになります。
したがいまして、症状固定日以後の治療は、交通事故とは相当因果関係がないということになります。
 
それ故に、加害者側は、後遺障害診断書に記載された症状固定日より、もっと早い時期に症状固定していると主張して、主張する日以降の治療費、通院慰謝料、休業損害の減額を求めてくるのです。
 
裁判例の多くは、医師が後遺障害診断書に記載した症状固定日を、損害賠償額算定における症状固定日と認定していますが、それとは異なる日を症状固定日として独自に認定している裁判例も散見されます。
 
この点に関して、髙木健司裁判官は、2013年赤本講演録において
「症状固定日に関する医師の判断を踏まえ、その合理性を、
①傷害及び症状の内容(例えば、神経症状のみか)
②症状の推移(例えば、治療による改善の有無、一進一退か)
③治療・処置の内容(例えば、治療は相当なものか、対症療法的なものか、治療内容の変化)
④治療経過(例えば、通院頻度の変化、治療中断の有無)
⑤検査結果(例えば、他覚所見の有無)
⑥当該症状につき症状固定に要する通常の期間
⑦交通事故の状況(例えば、衝撃の程度)
などの観点から判断し、不合理であれば別途適切な時期を症状固定日と判断している、といった説明が可能ではないかと思われます。」
と述べられています。
 
裁判官が、医師の判断と異なる判断を独自にする可能性があることを考えると、交通事故被害者として、疑義を残すようなことは避けるべきということになります。
 
具体的には、治療により何らかの効果が感じられるようであれば、そのことを正確に医師に伝えて、カルテに適宜記載してもらう必要があります。
 
また、通院を中断したり、通院の頻度が少なくなるなどした場合、症状が軽減している、あるいは治療の必要性を感じなくなっていると考えられてしまう恐れがありますので、医師の指示がある限り、定期的な通院を継続する必要があります。
 
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